老蘇州故事 old suzhou

2500年の歴史を刻む水都の彩り豊かな故事を訪ねます。


  


今古建築が残る街として、新たに注目されている蘇州旧市街平江区。
ここに胡相(雁垂に相)使巷と呼ばれる東西に走る路地がある。
 
“胡と”いう姓の「相使(宋代の、治安及び民間の仲裁司る官職名)」が住んでいたことよりこの名があるが、ここには切ない男女の物語が伝えられている。

第1話 帰小姐&平民郎
時は明時代末期。この路地には姓を“帰”という富豪が住んでいた。
帰家といえば、蘇州の名家。帰家には見目麗しい小姐がおり、
幼少の頃より文字通り深窓の暮らし。家人以外に会うのは
毎日食事を運んでくれる小僧の男の子のみ。
 
月日は流れ、男の子は目元涼やかな好青年となり、
二人は一生を誓い合う仲となる。
しかしそのことを知った帰家の主は大激怒。
すぐさま食事を運ぶのは妻に換え、二人は二度と会うことを許されない。
 
3ヶ月後絶望した小姐は、月の出ない漆黒の夜、屋敷内の井戸に
身を投げてしまう。
 
そのことを知りかわいそうに思った蘇州の人々は、その通りを
「胡相思巷」と呼ぶようになったという。
 
第2話 唐納&藍平
蘇州 唐納  
ここに1枚の古い写真がある。
舶来品と思われるスーツを着こなし、
細面の整った顔立ちの青年。
英語を自由に操り、
上海の映画界で評論家、監督、役者として名を馳せた
唐納と呼ばれた蘇州人だ。


唐は姓ではない。彼の本名は馬季良。1914年胡相使巷で生まれた
蘇州馬家少爺である。唐納は幼少時から才覚を表し、飄々たる風貌から
優秀な人材として注目されていた。
 
しかし我々が彼のことを語ってよく口にするのは、「紅都女皇」といわれた女性との
苦い恋だ。1935年春、彼は上海で、済南出身の「藍平」という芸名の女性と
知り合い、互いに一目ぼれ。36年新妻を連れて、静かな胡相使巷の邸に戻る。
「藍平」は彼の母を始め、家族によく尽くす闊達で親切な嫁であった。
 
蜜月は長く続かず、上海に戻ってほどなく両者口論の毎日が続き、
「藍平」は唐納のもとを離れ、また他の男性に走る。挙式2ヶ月後のことだ。
唐納は2度の自殺。これが世に言う「唐藍婚変」。「藍平」は延安に行き、
江青と改名する。その後の江青と毛沢東のことについては、皆さんも少なからず
ご存知のことだろう。一方、唐納は中国を離れ、海外でその後の40年を
送ることになる。
 
「藍平」は捕囚の身となった後、
若き日蘇州ですごした日々のことを、思い出しただろうか。
胡相使巷を歩くとそんな故人の思いがふと気になる。

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